焼肉の里乃家の思い出

京都にいた頃、大学の試験期間が終了したあとの打ち上げは、里乃家という焼肉屋に行くことが多かった。京大体育会の部活でも打ち上げで使われていたりするらしい。

 

なぜ我々はあそこまで里乃家に執着していたのか。別に肉が特別美味いわけではない。普通だ。そもそも学生に肉の質など分からない。他に里乃家を特別たらしめる何かがあったのだ。今日はそれを紐解こう。

 

まず夜のメニューについて、2990円で焼肉が食べ放題である。そして10円足して3000円払えば、アルコール含む全ての飲み物が飲み放題だ。誰が前者のメニュー頼むねん。

 

着席すると人数分のハツ刺しが登場する。肉にありつくまでのリードタイムが0秒である。通常であれば、盛り合わせが運ばれてきて焼いて肉が口に運ばれるまで10分はかかる。店に入るまでワクワクしていても、その10分間でテンションが下がっては意味がない。入店前に昂ったテンションの助走を絶対に殺さないという意思を感じる。

 

そして注文方法だが、「肉追加で」って言えば適当にオッチャンが盛り合わせて運んできてくれる。何も考えなくていい。試験で疲れた脳みそにやさしい粋な計らいだ。もちろん部位を選ぶことも可能。断られることもあるらしいけど。

 

そして飲み物だが、メニューを見たりなどしない。エビスビールが置いてあることは店頭に書いてあるが、それ以外は何の情報もない。

いや、情報など要らない。

適当に飲み物を頼めば、たとえ店に置いていなかったとしても、隣にあるリカーマウンテンにオッチャンがダッシュして買って来てくれる。無限の可能性がそこにはある。

 

何の心配もなく最初から最後まで打ち上げを駆け抜けられる。その空間が里乃家なのだ。

 

※この情報は私が学生だったころの記憶をもとに書かれているので、今どうなっているかは知りません。

 

おしまい。