かつて恐れていた事

大学院での僕の研究は完全に失敗だった。

 

同期には論文を出している奴もいる中、自分は殆ど何の成果も残せずに卒業する(させてもらう)ことになった。

 

その時にふと、「自分は世の中に何の価値も残せず死んでいくんじゃないか」という不安に襲われ、その恐れは割と長い事続いていた。

 

大学院での研究というのは、人生で初めて外の世界に働きかけるチャンスだった。

 

それまでの努力は、大学受験で勉強したり、部活をやってみたり、趣味で音楽やってみたり、バイトしてみたり、友達から笑いを取る話をしようとしたり…どれも自己満足で自分の内側の世界への働きかけに過ぎなかった(もちろんそういった成功で喜んでくれる人もいたが…)。

 

初めて外の世界に働きかけたときに、3年もかけて何も上手くいかなかったことで、上に書いたような恐れを抱くことになったのだ。自分の持っている才能は、自己満足で終わるものにしか向いていないのではないかという疑いが晴れなかった。

 

そんな感じで社会人生活を始めたので、とにかく形に残る成果を出すことに初めは凄くこだわっていた。研究開発の仕事なのに目先のことばかり考えていたように思う。

 

会社に入って2年くらい経ったあたりでちょっとした成果を出せたからか、気づいたらこの恐れは薄れていた(完全に消えたわけではない。今でも)。

 

今はもう少し落ち着いて、先のことも考えて仕事したり自分の能力を見つめたりしている。

 

おしまい。