僕の人生で最も幸運だったことの一つは、中学受験をさせて貰えたことだと思う。
中学受験して中高一貫校に入学しようとするような人は、だいたい親が医者か一流企業勤務の高学歴ばかり。僕が入った中学には親が芸能人の奴とかもいた。
うちは中堅私大卒で中小企業勤務の家系だったが、普通の人には正体不明の中高一貫校にも理解があり、受験させてもらえることになった。
ちなみに中学受験しようとした理由は、小学校の時に仲良かった奴が凄まじく勉強が出来て「受験をする予定」と言っていたのに感化されたからです。
関西在住だったので、多くの中学受験者はH学園とかN学園みたいな、大手でスパルタの塾に入っていた。一方で僕は人に影響された程度のモチベしか無かったこともあり、近所にある、自習室と参考書貸し出しと質問対応を兼ねたような個人経営塾に入った。
(前に「塾には通ってなかった」と書いた気もするが、厳密にはアレは嘘です)
受験に関わる手続きとかも教えてもらえたので、自習派の僕にも役立った。
小学6年生の時はそこでのらりくらりと勉強していたが、たまに模試を受けるためにH学園の某校に行ったりすることもあった。模試の結果はいつも惨憺たるものだったが、あまり気にしていなかった。
しかしこの舐めた態度をひっくり返すような出来事があるとき起きた。
夏~秋の頃だったと思うが、H学園で1日だけの特別講習のような授業があり、試しに受けてみることにした。
その時の授業が衝撃的だった。何が衝撃的だったかというと、何一つ講師の話してる内容が理解できなかったのだ。しかも周りの生徒は割とついていけてるっぽかったので尚更驚いた。
授業中は辛くて仕方なかったが、仕方が無いので終了時刻まで待っていた。
そして帰る道で授業中のことを反芻するうち、めちゃくちゃに悔しくて悲しい気持ちになった。今までの舐め腐った態度の自分を心底呪った。
その日から狂ったように勉強し始めた。
多くの受験生が小4小5から本気で勉強する一方、僕の場合はその時点で入試まで半年を切っていた。でもやるしかないという気持ちだった。
手始めに手持ちの参考書の解き方を覚え尽くすまで解いた。塾で参考書を教えてもらい、解くべき箇所を指定してもらった。親に参考書を買ってもらい、徹底的にやり込んだ。小学生ながら起きている間はずっと勉強していた。入試一か月前は小学校にすら行かなくなっていた。
そんな感じで頑張ったこともあり、受験の直前期に受けた模試ではそこそこ良い成績が出せた。父親と相談し、比較的難関だが割と合格しそうな中学と、記念に最難関に近いハイレベルな中学を受けることにした。
印象に残っているのは、後者のハイレベル側の中学の入試だった。入試当日に大手の塾がいくつも応援に来ていて、完全にアウェイな感じがあった。ただ、正直通る気がしていなかったこともあり、そこまで緊張しなかった。
結果としては、両校とも合格していた。
ハイレベル側の中学は奇問難問をその年出して来たので、運良く引っかかることが出来た。
で、せっかくハイレベルな中学に合格できたのでそこに通うことにした。母親と姉は、「そんな難しいところ行っても辛い思いするだけ」と反対したが、突っぱねた。
そんな感じで中学受験が終りました。
今思えば、悔しいという感情に本気で突き動かされたのは、この経験以降全然無い気がする。一生分の悔しい感情と引き換えに力を出せたのかもしれない。
おしまい。